東洋経済新報社が全国の都市を対象に毎年公表している「住みよさランキング」。
2017年のランキングが発表されたが、50位までに富山県の都市が8つもランクインしていた。
「あー、富山って住みやすいんだ」で終わっても面白くないので、ランキングされた8都市のデータを元に、富山についてちょっと考えてみた。
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→【住みよさランキング2020】過去4年と比較!富山は評価ダウン↓50位以内3つ…
住みよさランキングのランク付け方法
住みよさランキングは、公的統計をもとに、「安心度」「利便性」「快適度」「富裕度」「住居水準充実度」を元にランク付けしている。
それぞれの項目がどの公的統計をもとにしているかは次の通りだ。そこまで詳しく知りたくない場合は読み飛ばしてほしい。
安心度
●病院・一般診療所病床数(人口当たり)
2015年10月:厚生労働省「医療施設調査」
●介護老人福祉施設・介護老人保健施設定員数(65歳以上人口当たり)
2015年10月:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」
●出生数(15~49歳女性人口当たり)
2015年度:総務省「住民基本台帳人口要覧」
●保育施設定員数-待機児童数(0~4歳人口当たり)
2015年10月:厚生労働省「社会福祉施設等調査」、2015年4月:厚生労働省「保育所関連状況取りまとめ」
利便度
●小売業年間商品販売額(人口当たり)
2014年:経済産業省「商業統計」
●大型小売店店舗面積(人口当たり)
2016年4月:東洋経済新報社「全国大型小売店総覧」
快適度
●汚水処理人口普及率
2016年3月:国土交通省・農林水産省・環境省「汚水処理人口普及状況」、各都道府県資料
●都市公園面積(人口当たり)
2015年3月:国土交通省調べ
●転入・転出人口比率
2013~2015年度:総務省「住民基本台帳人口要覧」
●新設住宅着工戸数(世帯当たり)
2013~2015年度:国土交通省「建築着工統計調査」
富裕度
●財政力指数
2015年度:総務省「市町村別決算状況調」
●地方税収入額(人口当たり)
2015年度:総務省「市町村別決算状況調」
●課税対象所得額(納税者1人当たり)/2015年度:総務省「市町村税課税状況等の調」
住居水準充実度
●住宅延べ床面積(1住宅当たり)
2013年10月:総務省「住宅・土地統計調査」
●持ち家世帯比率
2015年10月:総務省「国勢調査」
評価方法
15指標それぞれについて平均値を50とする偏差値を算出し、それらを平均して「安心度」「利便度」「快適度」「富裕度」「住居水準充実度」の部門ごとの評価、および総合評価を行っている。また、市町村合併のあった市については、転入・転出人口比率など整備不能なデータを除いて算出している。
住みよさランキング2017
これが実際の住みよさランキングだ。富山県の都市は、赤くしてある。
画像引用: 最新!「住みよさランキング2017」トップ50
住みよさランキング2017富山の順位
富山県の都市は、50位以内に8つランクインしている。25位以内には6つと、他の都道府県と比べてもその比率は高い。
・砺波市 2位(↑1)
・魚津市 6位(↑7)
・滑川市 16位(↓2)
・黒部市 17位(↑6)
・射水市 22位(↓1)
・小矢部市 25位(↑3)
・富山市 36位(↑6)
・高岡市 48位(↓10)
住みよさランキングで富山が上位な理由
砺波市が昨年3位から一つ順位をあげた理由として、砺波市西部で3つの自動車道が結節する交通の要衝であることや、郊外型の大型商業施設が多数進出したことが挙げられている。
富山県の都市で上位入賞している地域は、富山における中心都市ではないことに気づく。
偏差値を決定づけている5項目の順位に注目してみると、住居水準充実度の順位が高いことが見てとれる。
住居水準充実度の順位を決める項目は「住宅延べ床面積」と「持ち家世帯比率」だ。
住みよさランキングで富山県の都市が上位にランクインしている理由は、ここでかなりのポイントを稼いでいるからだということになる。
住みよさと人口増加はそこまで関係ない
画像引用: 最新!「住みよさランキング2017」トップ50
住みよい都市なのであれば、暮らす世帯も増えているだろうと思いきや、一般世帯数増加率のトップ20を見てみると富山県の都市は一つもない。
以前『暮らしやすさって一体なんだ?市民目線で真面目に考えてみた』でも書いたのだが、住みやすさと人口増加は直結しない。
だって「住みよいランキング上位だからその都市に移住しよう」と考える人はほとんどいないから。
人間は住みにくい所で暮らしたいのではないか?
東洋経済新報社の住みよさランキングは、あくまで公的統計データをもとにした住みよさランキングだ。
そこに人間の感情などは、考慮されていない。あくまで一般論。
犯罪がなくて、交通の便が良くて、家が広くて、快適な所であれば、誰もが住むわけではないのだ。
現実に人が増えるところは、一般世帯数増加率のトップ20を見た方が分かりやすい。結局は都会で仕事があるところの人口が増えるのだ。
白河の
清きに魚も住みかねて
もとの濁りの
田沼恋しき
住みやすさについて考えていると、昔習った一句が思い浮かんだ。
安全ということは、娯楽が少ないともとれる。住居水準が高いということは、土地の余っている田舎だともとれる。
魚と同じで人間も少しくらい濁っているところの方が、実際は住みやすいのだろう。
まとめ
僕たちはランキングが好きだ。
分かりやすいし、あんまり深く考えなくても、上位にランクされると嬉しい。
富山県の都市がたくさんランキングされたりすると、シェアしたくなっちゃう!県や市の移住担当の人も喜んで、そのデータを使うだろう。
その意味で、東洋経済新報社のこのランキング化は上手いなぁと思う。
僕も富山は住みよいと思うけど、それは絶対的に人の価値観による。実際にどこに住むかの決定に「住みよさ」は、実はあまり関係していない。
住む場所を決める要素は、『暮らしやすさって一体なんだ?市民目線で真面目に考えてみた』にも書いたように、生まれ故郷だったり、仕事の関係だったりが大半だ。
僕たちの富山県が褒められるのは嬉しいんだけど、「どんな部分でも富山はいい!」って思ってしまうのはちょっと違うと感じた、ひねくれ者なのでした…。