久しぶりに金沢へ行った。
JR金沢駅の改札を出た途端に、都会に来たような錯覚を覚えた。
田舎者が都会に来たときのような「ちょっとワクワクする感じ」。
都会がいいというつもりはないんだけど、どうしてこんな気持ちになったのか不思議に思ったのでちょっと考えてみた。
すると「これは見た目の違いじゃないのか?」と思ったので、"見た目"を切り口にJR富山駅とJR金沢駅を比較してみた。
人は見た目が9割
印象の9割は最初の見た目で決まるらしい。
「かわいい」「綺麗」「美人」「色っぽい」「イケメン」「誠実」「真面目」「面白い」
人と会ったとき、基本的に一瞬でその人の印象が決まる。
ホームページなどのサイトも、一番最初の見た目(ファーストビュー)が重要だと言われている。
「中身を見ろよ」ってのはもっともな意見だが、まず「興味を持ってもらわないと」中身は見てもらえないのである。
「チラシ」や「広告」と認識しただけで、それらをすぐにゴミ箱行きにしている人の行動がそれを実証している。
では、富山駅と金沢駅って見た目がどれだけ違うんだろう?
富山駅と金沢駅の外観
まずは富山駅と金沢駅の外観を比較してみる。
JR富山駅はいわゆる「駅」という感じで、特に珍しさはない。
あえて言えば、市電、ポートラム、セントラムが乗り入れているという所は、結構珍しいかもしれない。
JR金沢駅は、能楽の鼓をイメージした「鼓門(つづみもん)」と、ガラス張りの天井アーチ「もてなしドーム」が、完全なまでの差別化を図っている。
どうやら金沢駅は、「世界でもっとも美しい駅14選」に国内で唯一選ばれているようだ。
駅を観光地化するという発想
富山駅と金沢駅のこの外観の違いは、どこから来るのだろうか?
本当かどうかは分からないが、「金沢の人は、見た目にすごくお金を使う」という話をよく聞く。
もしかしたらそこらへんの価値観の違いが、この見た目の違いに繋がっているのかもしれない。
しかし、それだけではないと思う。
ここからは完全に僕の予想なのだが、富山と金沢にはそもそも次のようなコンセプトの違いがあったのではないだろうか?
富山
どうやって観光地へ集客しようか?
世界全国各地→立山などの観光地
金沢
入り口の駅自体を観光地にして、とりあえず人を集めよう。
世界全国各地→金沢駅→兼六園などの観光地
この2つの考え方の違いは、見た目以上に富山と金沢にかなり大きな差があることを表している。
観光客の視点に立つと、入り口の広さがまるで違うのだ。
金沢の場合は、金沢駅をチラ見してから他へ移動するという手段もある。
スーパーの試食みたいなものかもしれない。まずは金沢駅を見てから、他の観光地を回るかどうか判断するというような感じだ。
富山の場合は、立山などの観光地へ行くしかない。0か100か。試食がないので、ハードルが高い。
北陸新幹線を降りた時のファーストビュー
北陸新幹線で、改札を出たときに見える景色を比較してみる。
JR富山駅の改札を出たときに目の前に見えるのは、ライトレールだ。
写真中央の床で青く光っているのは、実は富山のガラス。知っている僕が見てもほとんど気づかない...。
また一応右の方に、かろうじて観光案内所が見える。
JR金沢駅の改札を出ると、まず目の前に見えるのは、「Rinto」という商業施設だ。
あとは「おみやげ」という文字と、数々の案内板だろう。またすべての柱にデジタルサイネージというデジタル広告が設置してある。
右の隅にちらっと見えるのは、観光案内所。実際に見るとわかるが、看板がどデカイので駅から外に出るときに目に飛び込んでくる。
賑わい演出と商業化
僕が金沢駅に来たときに「都会に来た」と錯覚したのは、この見た目の違いのせいだと分かった。
作りが完全に東京などの都会と同じなのだ。
明るい光の賑やかさで、なんだか「お金を使ってもいいかも?」みたいな変な気分になる。
デジタルサイネージが、その賑わい作りに一役買っている。広告費をもらいつつ、賑やかさを演出するという上手い方法だなぁと感心した。
僕はあまりゴミゴミしたのが好きではないので、富山の田舎っぽい感じの方がいい。
しかし観光客の目線に立つとどうだろう?
そしてもっと案内をしっかりしないと、せっかく訪れてくれた人の満足度は下がるだろう。
ご飯やお茶をして休もうと思っても、改札を出ただけでは、ほとんどそれらの情報が入ってこない。
金沢駅の場合は、改札を出た瞬間に「目の前の施設でご飯もおみやげも買えるな」というようなことがすぐに分かる。
「静かだけどしっかりと情報が入ってくる」富山駅はそんな感じになるとよいと思う。
富山駅と金沢駅を出た瞬間の景色
駅の建物を出たときに、どのような風景が見えるのかを比較してみる。
JR富山駅を出ると、広い空とバスとライトレールが見える。
ほのぼのとしていて、「田舎に来たぞぉ」という感じがして結構いいと思う。
観光客としても、この広い空は、山を連想させるので、意外と満足度が高いのではないだろうか?
JR金沢駅を出ても、巨大なガラスアーケードおもてなしドームが雨風から守ってくれる。
また鼓門も目の前に見えて、とりあえずくぐってみたくなる。
旅の出発のようなそんな感じがする。
都会と田舎の差別化
この2枚が富山と金沢を、しっかりと差別化しているような気がする。
富山が都会化することで北陸地域でトップを取ろうと思っても、写真を見て分かる通りちょっとやそっとじゃ無理だろう。
富山にしかない豊富な山と自然を売りにするのが、都会からの観光客のニーズにもマッチしているような気がする。
汚い店や汚い通りを全部綺麗にして、都会でも田舎でもない中途半端になるのが一番怖い。
いくら都会ぶった建物を建てても、周りの環境と合わないし、富山の田舎くささはとれない。
田舎くささで勝負する方が、勝率的には高い。
富山駅と金沢駅の改札
観光客が利用するであろう北陸新幹線の改札を比較してみる。
JR富山駅の北陸新幹線の改札は、一般的な改札とほとんど変わらない。
JR金沢駅の北陸新幹線の改札で、一番違うのはペッパーくんがいることw
ちょうど外国の方が色々と遊んでた。
ちょっとした気遣いのデザイン
基本的に全国の新幹線の改札は、ほとんど違いが見られないのだろう。
しかし金沢駅は、ペッパーくんという外付けのサービスを利用して、気遣いともてなしの心で他の駅との差別化を図っている。
またデジタルサイネージの向きも、時刻表と同じ方向に設置してあって目に入りやすい。
富山のデジタルサイネージの向きは、改札に対してほぼ真横。これではほとんど見られない。
ほぼ同じ施設でも、本当にちょっとした工夫と気遣いで、お金をほとんどかけずに差を出すことができる。
満足度には大きな差が出てくるはずだ。
こういったユーザー目線のデザインは、金沢の方が断然うまいなぁと思ってしまった。
観光案内所の情報
金沢駅を探索していて、気になったのが観光案内所だ。
これは金沢駅の観光案内所の中にあった、観光情報のパンフレットが置いてある場所。
観光情報を置くために、かなりのスペースを使用している。
ここを見るだけで、石川県の観光への力の入れ具合が分かる。
ちなみに福井や富山、長野などの石川県近県の観光情報も置いてある。
富山を探してみたら、4つ分のスペースに富山観光ナビの「ねまるちゃ」の冊子1種類しか置かれていなかった...。
福井県は富山の4倍の16のスペースを確保していた。
これもスペースをレンタルしているのかもしれない。
それにしても「ねまるちゃ」1種類を4つ分のスペースにって...、他に置くものないのか....
金沢駅のそば屋で富山の名物
金沢駅の立ち食いそばに寄ったのだが、びっくりした。
なんと「富山のしろえびかき揚げ」と「高岡大仏コロッケ」が売っているのである。
しかも店内に貼ってあった新聞には、「金沢駅そば 富山ブーム」の見出しと共に、しろえびかき揚げと高岡大仏コロッケの売り上げが順調なことが書かれている。
「富山をダシに使うな!」とかではなく、純粋に「金沢商売うまいなぁ」と思ってしまった。
僕は富山駅の立ち食いそば屋は結構好きなのだが、そこで富山の名物とかを感じたことはなかった。
しろえびかき揚げや高岡大仏コロッケなどは、もちろんメニューにない。
富山の名物に、金沢駅で出会うとは...
立ち食いそば屋でもおもてなし
金沢駅のそば屋のお盆には、滑り止めが敷かれていた。
富山ではこんなものはない...。
別になくてもいいんだけど、「ちゃんとあなたのことを考えてますよ」と言われているような気がした。
まとめ
僕たち富山県民は、金沢を意識しているとよく言われる。
確かにそうなのだ。
金沢は観光資源が街中にあるから有利だとか、歴史がどうとか色々聞いたことがある。
富山県と石川県は、人口がほとんど変わらない。GDPも約4兆とほとんど変わらない。
富山市と金沢市で比べても人口は、ほぼ一緒だ。ただ人口密度が3倍ほど違う。
人口密度の違いを考えたら、使える税金の差でこれだけの違いが出ても不思議はないのかもしれない。
でも今回「見た目」つまり「視点」を切り口に、客観的に富山と金沢の違いを冷静に見てみて、ちょっとしたセンスの違いを感じた。
金沢は気づかないような細かい部分まで、ユーザー目線でしっかり作りこんでいる。
富山は金沢を敵対視するのではなく、もっともっと学ぶべきところがあるのではないだろうか?
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