【オノマトペの屋上の見方が変わる】デザイン担当の佐藤卓さんの話が面白かった!

オノマトペの屋上の見方が変わる!デザインを担当した佐藤卓さんのお話

4/29(土)富山県美術館の屋上庭園『オノマトペの屋上』がオープンした。

それに伴い開催された『富山県美術館オノマトペの屋上オープニングイベント』に行ってきた。

富山県美術館に100人強収容のセミナースペースがあったんだな…初めて知った。

僕はNHKの「デザインあ」で佐藤卓さんの存在は知っていて、デザインにも興味があったのでとりあえず参加してみたのだが、想像以上に面白い話を聞けた。

佐藤卓さんの話を聞いてから、オノマトペの屋上の見方、世の中にあるデザインの見方に少し深みを持てたような気がする。聞いた話を自分なりにちょっとまとめてみた。

 

目次

佐藤卓とは

佐藤卓
1979年東京芸術大学デザイン科卒業。81年同大学院修了。株式会社電通を経て、84年佐藤卓デザイン事務所設立。「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、「ISSEY MIYAKE PLEATS PLEASE」グラフィックデザイン、「クリンスイ」グランドデザイン、「武蔵野美術大学 美術館・図書館」ロゴ、サインおよびファニチャーデザインを手掛ける。またNHK教育テレビ「にほんごであそぼ」企画およびアートディレクション・「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務める。著書に『デザインの解剖』シリーズ(美術出版社)、『クジラは潮を吹いていた。』(DNPアートコミュニケーションズ)。

今回のイベントで、まず佐藤卓さんは自分のプロフィールについてツッコミを入れていた。

「東京芸術大学を出て、電通に入社、デザイン事務所設立なんていうと、ものすごい人に見えますよねw でも僕は、大学時代はロックバンドにハマってほとんど大学に行っていなかった。バンドで食っていけるかの可能性を探るために大学院に行ったけど、音楽で飯を食べるのは無理だと思って就職をした。人生、何かしらでちゃんとご飯を食べられるようになるもんですね。」

的な口調だったと思うが、とても面白い人だと思った。

世の中に存在している物に対して、僕たちが見ているのはほんの少しの部分だけ。「東京芸術大学を出た」の一言を展開してみるとその中には、デッサンを描いてバンド活動をして、課題を提出して、ご飯を食べて、というように膨大なコンテンツが含まれている。

オノマトペの屋上にある遊具にも同じことが言える。あの遊具を作るためにどれだけの人が関わって、どんなことを考えて作られているか、目の前にあるバックボーンを想像すると、途端に目の前の出来事に深みが出てくる。

それにしても、佐藤卓さんってもう還暦迎えていたのか…40~50代くらいかと思ってた。めっちゃ若く見える。

佐藤卓さんのデザインの考え方

話を聞いていると、佐藤卓さんのデザインに対しての考え方がすごく面白かった。

「僕は何か作り出してやろうなんて思ってはいません。そこに元からある価値を見つけてあげるだけです。どんな場所にもそこにしかない価値があります。」「付加価値という言葉が、日本をダメにしてきたのではないか?何かを出す前に現在の状況を見てみること。なにか付け足そうという視点で見ると、本来ある価値が見えなくなる。」

一言一句そのままという訳ではないが、僕はそんな風なことを言っているように感じた。この考え方は僕の中ですごくしっくりときた。

確かに付加価値って、実は無理やりつけているようなものが多い。それが必要なときももちろんあるのだろうが、まずは「そのもの自身の価値を見出すこと」これが大事なのだ。

富山県にも同じことが言える気がした。

「あれがない」「これがない」と何かしらの付加価値をつけようとする。でも、富山には美味い魚と、立山連峰など、他の県には絶対に真似のできない価値が、気づきにくいけども確実にあるのだ。

僕がこの「とやま暮らし」のブログを書いているのも、それに近いものがあるのかもしれない。言語化されると頭の中ですっきりと整理される。

中身と外見とデザインの関係

デザインは、元からある価値をうまく表現することだという考え方に立つと、当然かもしれないが中身が大事になる。

よく外見だけ綺麗に装って誇大的に表現されているものを見かける。人間でも同じかもしれない。

もともとのその物自体の価値があって、初めてデザインが活きてくる。10の価値のある物を100に見せるのがデザインではないのだ。10の価値のものをなるべく10に近く伝わるようにするのがデザインなのだ。

その様に僕は思った。これはしっかりと意識しておかないと、やってしまいがちだ。全然価値のない物なのに、騙すような表現の仕方は絶対にしてはいけない。

日本人とオノマトペ

オノマトペ
自然界の音・声、物事の状態や動きなどを音(おん)で象徴的に表した語。音象徴語。擬音語・擬声語・擬態語など。

佐藤卓さん曰く、「僕たち日本人は、海外では考えられないほどのオノマトペに囲まれている」そうだ。

言われるとそうだ。何かがぶつかる音も「ガツン」「ゴツン」「ドスン」で全く印象が違ってくる。これは漫画などにもよく表れているそうで、海外での評価も高い。

漫画の表現で、無音の状態を「し〜ん」という文言で表されているのは、まさに日本独特な気がする。

オノマトペの屋上のコンセプト設計

富山県美術館「オノマトペの屋上」子ども達が夢中で遊ぶいい空間だった』でも簡単に書いたのだが、オノマトペの屋上はもともとこの場所にあった子ども達に大人気の「ふわふわドーム」の設置が決まっていた。

佐藤卓さんは、豪雨の中現場を見に来たそうだw ふわふわドームを元に考えていると「これってオノマトペじゃないか、オノマトペを元に遊具を作り出すと面白いんじゃないか?」といった感じで、コンセプトが固まっていったそうだ。

確かにオノマトペってのは、子ども達にも分かりやすい。感性の豊かな子ども達が、どんなオノマトペを感じるのかも面白い。

外の遊具の設計は大変

オノマトペの屋上の遊具「ぼこぼこ」の制作過程

実際の遊具の制作の話。常に外に置かれる物の制作はとても難しい。室内であれば、建物が雨風や紫外線などから作品を守ってくれるが、屋外では全てに耐えられるように制作しなければならない。

遊具に雨水がたまるような箇所があれば、そこだけがどんどん劣化していってしまう。雨がたまらずにスッと流れる形にしなければならない。

また紫外線などにも強い塗料も選択しなければならない。様々なこと全てにおいての耐久性や工夫が必要になるのだ。

オノマトペの屋上の遊具「プリプリ」の構造

オノマトペの屋上の「ぷりぷり」も、水が全て流れ落ちるように細かいフォルムが検討されている。角度が1度違うだけでも、水がたまり込んだりしようだ。

オノマトペの屋上の遊具「プリプリ」の模型

富山県美術館の3階、環水公園と反対側のフロアには「ぷりぷり」の原型が展示してあるので、見てみてほしい。

大人が本気で作っている

オノマトペの屋上の遊具は手作り

オノマトペの遊具は、PCのデータで作っているわけではなく、職人が紙やすりで手作業で削って丁寧に形作られている。

佐藤卓さんは、「子どもの遊具だからと手を抜くと、子どもにはすぐに見透かされます。大人が本気で作っているのです」というようなことを言っていた。

先ほども書いたように、屋外遊具の耐久性もそうだが、重さなども考えられている。

オノマトペの遊具は、FRPという軽くて丈夫な素材で出来ている。

オノマトペの屋上の遊具「つるつる」の型

手作業で作り上げた原型を元に型を作り出し、それにFRPを貼り付け、出来上がったものに塗装して完成する。

その全ての肯定に職人技が活かされているのだ。

オノマトペの屋上の遊具「プリプリ」の仕上がり

富山県美術館の屋上庭園「オノマトペの屋上」の遊具は、このようにすごい手をかけて出来上がっている。

実は富山県美術館も同じで、廊下に使われている木材などもすごくこだわって作られている。

デザインの解剖

デザインの解剖「リカちゃん人形」

2001年から佐藤卓さんが行っている「デザインの解剖」という展覧会。

写真のように「リカちゃん人形」などをデザイン的な視点で完全に解剖する。関節の樹脂はなぜこの柔らかさなのか?足はなぜ硬い素材なのか?髪の毛はなぜこの素材なのか?

デザインには、全てに使い勝手を考えた工夫が施されている。何か理由があって、それはその形でそこに存在しているのだ。

デザインの解剖「XYLITOL」

キリシトールも解剖される。

この包み紙も3種類の素材で出来ていて、それぞれに存在理由がある。中身の個数も、色も形も、ロゴマークも様々なことを想定して作られているのだ。

そう考えてくると、目の前にあるもの全てが面白く興味深く見えてくる。

デザインあ展

富山県美術館のデザインあ展

来年2018年、どうやら富山県美術館で「デザインあ展」が開催されるらしい。

「富山県美術館を皮切りに、全国を巡回する感じになるんじゃないか。」って感じで佐藤卓さんは話をされていた。

全国を回る展覧会が、富山県の美術館で一番最初に開催されるってのは意外と珍しいのではないだろうか?

そしてなんとあとイッセイミヤケさんが、自ら声をあげて富山県美術館のスタッフユニフォームをデザインしてくれるらしい!8/26(土)の全面オープンがますます待ち遠しい!

まとめ

デザインとは、綺麗な図面だけではない。美術館にあるものだけがデザインではない。

どうしたら使いやすいか、分かりやすいか、伝わりやすいか、安全か、など本当に様々な角度で試行錯誤されるのがデザイン。オノマトペの屋上だけでなく、この世の全ての物は、デザインされている。

富山県美術館全体も、デザインされている。

オノマトペの屋上を見て遊ぶときにも、これってなんでこの形をしていて、なんでこの色で、なんでこの肌触りなのか?子どもと「なんでだと思う?」なんて聞きながら遊ぶのもいいかもしれない。

目の前の物体から、様々な関わりを考えられる子ども達が増える。そんな小さな部分からゴミのポイ捨てや、物を粗末にすることがどんどん解決していくのかもしれない。

オノマトペの屋上の見方が変わる!デザインを担当した佐藤卓さんのお話

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