2017年10月21日に放送したNHK「ブラタモリ」は、前回・前々回の「黒部ダム」に続き、立山の室堂平や称名滝の紹介。
北アルプス立山の奇跡的で神秘的な地形の成り立ちや歴史について、タモさんがこれでもかというほど追求した。
立山の地形についてそこまで深く考えたことがなかったが、初めて知ることばかりでめちゃくちゃ面白かった。
立山の見方が変わるので、もっと早くに知りたかった!
ブラタモリ立山についての情報を、整理してまとめてみた。
北アルプス立山連峰
北アルプス立山は、富山の超有名な観光スポット!
富山市の中心部からは、約2時間半。シーズンは4月〜11月までの8ヶ月間で、年間の観光客は約100万人。
観光客だけでなく、富山県民でも好きな人は毎年のように登っている。多くの小学校で「立山登山」があり、雄山まで登るほどだ。
しかし、立山という名前の山は存在しない。
立山とは、雄山(3003m)、大汝山(3015m)、富士の折立(2999m)などの立山連峰のことだ。
立山連峰の最高地点3015mにある大汝山、富士の折立、雄山の登山のことを立山三山縦走と呼ぶ。
富山県民が「立山登山」という場合の立山は、「雄山」のこと。「立山行ってきた」という場合の立山は、「室堂や雄山など立山連峰全体」のことをさしているように思う。
立山の魅力は、なんといっても圧倒されるほどの自然の絶景。
そして、室堂から2〜3時間で3000m級の山に登れるという手軽さと安全性だろう。これだけ気軽に、3000m級の山々の絶景が見られる場所は、そうそうない。
日本三霊山
日本には山岳信仰が古くからある。
- 立山
- 富士山
- 白山
この三山が日本三大霊山といわれている。
立山曼茶羅図に示されるように、立山連峰は極楽浄土に見立てられていた。
信仰登山の拠点になっていたのが、室堂平だったのだ。
なぜ北アルプスなのか?
アルプス山脈といえば、ヨーロッパ。
では、なぜ日本の山なのに「アルプス」と呼ばれているのか?
「アルプ」とは、峰や高い山という意味だ。その複数形で「アルプス」。
日本の北アルプスの名付け親は、明治時代に政府に招へいされた科学者「ウイリアム・ガウランド」。
大の登山好きで、立山連峰を含む山々をみて、スイスのアルプス山脈によく似ているので、「北アルプス」と名付けた。
では、なぜ立山連峰は、スイスの北アルプスに似ていたのか?
それの秘密は、立山連峰の成り立ちにある。
立山が北アルプスに似ている理由
ヨーロッパ、スイスのアルプス山脈は、氷河によって削られてU字谷のカールになっているのが特徴的。
立山連峰も、氷河によって削られたU字谷が数カ所で見られる。
氷河
大量の雪からできる動く氷の塊。
氷河は、大量の積雪がその圧力で圧縮されて氷になることで発生する。
実は、日本で氷河が見られるのは富山の立山連峰だけ。
立山は常に20m以上の積雪があるからこそ、氷河が発生する。
北海道などにもありそうなイメージがあったが、なんとここ富山の立山連峰が日本唯一の氷河が見られる場所。
中学校でV字谷とU字谷とか習った気がするけど、ブラタモリの実験を見て、ようやくその違いを理解した。
水で削られるか、氷の塊で削られるかで、谷の地形が変わってくるのだ。日本唯一の氷河で山が削られるからこそ、スイスの北アルプスと似たような景色が見られる。
また室堂平には、白っぽい花崗岩という岩が多く落ちている。
花崗岩
ドロドロのマグマが地下の深い所でゆっくり冷えて固まる。
これらの岩は、氷河によって運ばれてきたもので、火山によって発生する岩ではない。
室堂に落ちている岩を見て、そのような歴史を感じるのも楽しそう。
ちなみに氷河は、雪が押し固められて発生する氷なので、溶ける時にその当時の空気が出てくる。耳を近づけてみると、「パチパチ」という空気の音が聞こえるはずだ。
日本で唯一の氷河が存在して、スイスのアルプスと同じような絶景が見られる立山の奇跡の一つ。
室堂平の成り立ちと歴史
室堂平がどのようにできたか、考えたことがあるだろうか?
黒部ダムについての記事で、前立山と後ろ立山と黒部峡谷の奇跡の地形の成り立ちについては簡単に説明した。
立山はマグマの力と、東西圧縮によってできあがっている。
でも、なぜ室堂平はこんなに平らなのだろうか?
東西圧縮で盛り上がってできた山であれば、こんなに平らであるはずがない。
何か原因があって平らになっているのだ。
室堂平が平らな理由
室堂平が、あれだけ平らで広大な理由は、「削られた」から。
溶岩によって削られて、現在のように平らになったのだ。
立山連峰には、もともともう一つ大きな山があった。それが4万年前に噴火!溶岩を流して室堂平を作り、その後にその山は崩れ去った。
そうして、2400m以上の高地に広大な室堂平ができあがった。
だから、室堂には噴火で流れ出た溶岩が冷えて固まった安山岩がたくさん落ちている。
大昔にそんなに高い山があったのも、噴火があったのも全然知らなかった…。
そもそも室堂や立山の成り立ちなんて、考えたことがないw
このような立山の成り立ちを知ってから、立山室堂を見るとまた味わいが変わってくる。
みくりが池の成り立ちと歴史
先ほど、室堂平は火山から流れ出た溶岩によって削られでできたといった。
でもそう考えると、みくりが池があるのはおかしい。溶岩が削ったのであれば、みくりが池は溶岩で埋まっているはず。
現在、みくりが池が観光名所として綺麗に存在しているのは、室堂平ができた後にできたからだ。
みくりが池は、水蒸気爆発によって出来上がったカルデラ湖。
カルデラ
火山の中にある、円形またはそれに近い、広くて大きなくぼ地。火山体の崩壊・陥没によって形成されたものが多い。
(Wikipedia)
僕たちがなんとなく見ていた室堂平とみくりが池は、同じ時代にできた訳ではない。
室堂平が溶岩で削られて平らになった後に、水蒸気爆発が起ってみくりが池ができたのだ。
もしこの順番が逆だったら、みくりが池は溶岩で埋まってしまって存在していない。
これも立山が奇跡の地形といわれる理由の一つ。
弥陀ヶ原の成り立ちと歴史
立山には、まだ奇跡の地形がある。
それが立山連峰の2000m付近に広がる平地「弥陀ヶ原高原」だ。
その広さは、室堂平の3倍以上。さらに3000もの池が点在している湿地帯。
ラムサール条約に登録されている中で、日本でもっとも高い所にある神秘の湿地帯だ。
ラムサール条約
湿地の保存に関する国際条約。水鳥を食物連鎖の頂点とする湿地の生態系を守る目的で、1971年2月2日に制定され、1975年12月21日に発効した。1980年以降、定期的に締約国会議が開催されている。
(Wikipedia)
なぜこれだけ標高が高い所に湿地ができるのか?
湿地ができるためには、平らであることと、大量の水が蓄えられる土壌が必要だ。
弥陀ヶ原は、噴火によって発生した火砕流が谷間を約20kmに渡って埋め尽くして出来上がった溶結凝灰岩の広大な平地。
溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)
火砕流が冷え固まってできる岩石。
平らであることの条件はクリアした。
次に土壌だが、弥陀ヶ原高原の土は黒い泥炭。
泥炭
枯死した湿地植物などが炭化した石炭。水分を多く含む。炭化の程度が最も低く、暗褐色で、燃焼のカロリーが少ない。
(Wikipedia)
標高の高い弥陀ヶ原では、分厚い雪が高原の一面を覆い、初夏まで溶け残る。
そのせいで、微生物による分解が進まず水を保持する力の強い泥炭になり、大量の水が蓄えられるのだ。
この湿地たりうる2つの条件が奇跡的に揃ったことで、弥陀ヶ原の景色はできている。
弥陀ヶ原ホテルのガラス張りの風呂場から、弥陀ヶ原高原の絶景を見ながら入る風呂はマジで至福♪
日本一の絶景、称名滝
ブラタモリの中で「日本一の絶景」と言われていたのが、称名滝。
称名滝の高さは、なんと350m!
その落差は日本一で、東京タワーよりも高い。
東京タワーよりも高い所から毎秒数百トンの水を落としてると考えると、ものすごい…。
土台の大地は溶結凝灰岩。それを北アルプスの水が削って出来上がった滝。
ブラタモリの情報で初めて知ったが、滝はどんどん後退していくそうだ。
改めて考えてみると、水が大地を削っていくのだから当たり前なのだが、そんなことを考えもしなかった。
滝が後退するスピードは、10年で1m。
つまり称名滝は、7万年前は7kmも下流にあった計算になる。
称名滝の駐車場から、滝まで結構歩かんとダメなんは、後退していっていたからだったのだ。スッキリ☆
まとめ
ブラタモリの立山編。
立山の素晴らしさを改めて思い知らされて、正直感動レベルだった。
今まで「綺麗だなぁ」くらいしか思わんと立山登山したり、称名滝を見にいったりしていた。しかし、その成り立ちや歴史を知ることで、見えるものは全く違うなと実感した。
「富山はなんもない」ってよく言われるけど、立山って自然があるだけで十分特別なんじゃないだろうか?
どんなものでも、それを使う人、見る人次第なんだろうなぁ。
ブラタモリ黒部ダム編も良かったし、ブラタモリはそのモノの歴史や成り立ちという背景を知れるいい番組だなぁと思った。
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